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[コメント] クーリンチェ少年殺人事件(1991/台湾)

登場人物ひとりひとりが担うもの。あるいは、世界の狭間。
ちわわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







スー、モー、マー、ズル、ハニー・・・。ミン、ツイ。 スーの両親と、二人の姉、兄、妹。敵対勢力の面々。 登場人物ひとりひとりが担っているものの描きかたが、 作品に一通りには理解できない拡がりをもたらせている。 もしもこの作品について語るなら、その拡がりの造り出し方に注目するほかなかろう。

たとえば一見無秩序なミンの男性関係にせよ、実際に描かれかたを みると、どこか納得させるものがある。実際何人かの女の子はああだった、と 僕自身思う。多くの男性の気を惹いて、心を乱して、優しいか と思えば、残酷だったりする。でもその残酷さがどこか愛おしくも思う。 ハニーに対するミンの気持ちと自分への気持ちだけが、本当のミンだと信じたい、とスーは思っている。だけれども、ミンは自分に正直に 苦しんで生きているだけなのは僕にもわかる。

また奇妙なまでにナルシスティックな男性達。モーのような幼い子から、ハニーのような 大人の敷居を超えていこうとする年齢のものまでが、組織をつくったりしながら 「自分」を求めていこうとするのだけど、それだけにむき出しのままに男性社会の 何か本質的なものがみえる。

「世界は変わらない」。少女たちはこういう。だが、世界と世界の狭間で、軋み続ける 何かがある。その何かを定義することは、僕にはできないけれども。 気まぐれなラジオの雑音のような何かが。

蛇足だが、スー、ミン以外の人物、特にツイ、マー、ハニー、すぐ上の姉といった 人物の描かれ方が実に素晴らしい、ということを付け加えておきたい。

(評価:★5)

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