[コメント] 招かれざる客(1967/米)
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一心に家族に向けられた愛情は差別を駆逐する。なぜなら、家族を思う心情には白も黒もないのだから。
父は心の底に潜んでいた差別心から結婚に難色を示したのではない。リベラルな新聞人であるがゆえに、娘夫婦の前に立ちはだかるであろう困難の強固さを知っていたのだ。結婚反対は父として当然な態度である。むしろ、差別を色濃く意識しその影響から抜け出せないでいるのは、娘の親の同意を結婚の条件にしたジョン(シドニー・ポワチエ)や、白人娘に手を出す黒人など不実の極みだと言い切る黒人メイドだろう。無理もない、彼らはそう言わざるを得ない仕打ちを受けてきたのだから。
娘も、その母(キャサリン・ヘップバーン)も、またジョン(ポワチエ)の母も、女たちは漠然とだが偏見を乗り越える術があるこに気づいていたようだ。花嫁の父マット(スペンサー・トレイシー)はジョンの母によって、それが一途な思いの強さだだと気づかされる。その思いとはマットが妻や娘に(結婚に難色を示すというかたちで)そそいできた愛情そのものなのだ。家族に向けられる愛情は、この世のあらゆるものを凌駕することを父マットは身をもって知っていたのだ。
ジョン(ポワチエ)が有能な医師でなければ、父マット(S・トレイシー)の対応は変わっていたのではないかという疑念がある。確かにジョンの生活力に問題があったとしたら、父は娘の結婚に反対しただろう。しかし、それはジョンが白人だったとしても同じだ。つきつめれば、娘を思う親の気持に白も黒もないのだ。
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