[コメント] 渚のシンドバッド(1995/日)
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浜崎あゆみさんの演技は絶品でした。
こういう縁起に匹敵する演技って、破壊的なイメージが強くて、最近だと『愛のむきだし』の満島ひかりさんだとか、少し前だと沢尻エリカさんなどがそうなんですけどね。その後の芸能活動に影響するほどの迫真演技だったと思います。
そういう意味で浜崎あゆみさんが音楽の世界に向かったというのは正解ですよね。演技で身を立てようとするには、あまりにも過酷な演技だったと思います。
今(2010年)から15年も前の映画なんですね。
この映画で語られる真実性の高さとは、登場する人物の家庭環境がサイドストーリーとして生きています。
主人公の伊藤くんは、母親が借金を作って家を出て、父親と二人暮らし。そして父親は彼が同性愛者であることを理解してはいませんが、知っています。そして病院を紹介します。
このドラマで最も聖人的な存在である吉田くんでさえ、父親は既に亡くなっていて、母親は夜の仕事で家計を支えています。そして母親が再婚するかどうかを気にかけているんですね。
しかし、この男性二人が追い続ける相原さん(浜崎あゆみさん)だけ、唯一家庭環境が知らされません。
会話の中で唯一、おなあちゃんちの原風景が語られるだけですね。そしてこの場所が最後のクライマックスにつながるわけですが、この少女の家庭環境だけがヴェールに包まれ、そんな女性を二人の男が追い続けるラストに向かうんですね。
この映画の前に小津安二郎監督の作品を見たんですが、時代の変化はあるにせよ、そのギャップに甚だ疲労感を覚えました。古き良き大家族時代の神経的抑圧と、核家族が肥大化した現代の放置された少年少女の行動の奇怪さ。この流れを組まないと、映画の本質に届かないような気がします。
ロングショットの長まわしは、相米慎二監督を彷彿とさせますが、そこに映し出される青春像は『台風クラブ』のような無邪気さではなくて、もっと深いエネルギーを感じました。
橋口亮輔監督作品は『ぐるりのこと』→『ハッシュ』の順で鑑賞しましたが、この人の原風景にこの映画が横たわっていることが良く理解できておもしろかったですね。才能ある監督です。
2010/03/13 自宅
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