ロードショウ、見て参りました。 正直言って、「なんじゃこりゃ」な映画。 映画のようで映画じゃない、ペンペン♪ この不可解さを解く鍵がどこかにあるはずだと、 内容を振り返えれば、全体を示すシンボルが映画の中にみつかりました。 カップ麺。深津絵里がいつも食べてる。 劇中では、たしか、「ワサビヌードル」だったかな。 ピリリと辛い、わさび味。 お気軽に調理ができて、すぐに満腹になるインスタント。 化学調味料で味付けされてて栄養もなく、みかけばかりの食べ物。 まったくこんな映画。

今回映画を見るにあたって、今迄テレビで放映されたモノを特番も含めて、 全て知合いから借り受け視聴し、基礎知識をつけてました。 その上で言うと、テレビで見てなかった人は映画を見ても内容はよくわからないと思う。 テレビを見た人も劇場で見る必要はなく、 ビデオ化かテレビで放送されるのを待っていてもいいと思う。

理由その１ テレビでの放送分、しかも、特番をも踏まえた上で、キャラクターや状況設定がなされている。 独立した作品というよりも、むしろ、特番の3本目という内容である。 だから、テレビを見てない人には内容が把握できません。 だって、エンディングロールで流れる映像のほとんどは、 テレビ放送の中の画像だったりもするし。

理由その２ テレビドラマのスケールで映画を作ってしまった為か、 劇場で見ていると、まったくちゃちい。 内容がとくにひどい。 テレビ放送の時と比べても、今回は話がご都合主義の極致。

ドラマ「踊る大捜査線」は、事件をメインにした従来の刑事ドラマではなく、 現場と上層部との確執を軸にした人間ドラマがメインである。

湾岸署に配属された青島刑事（織田裕二）は、 公務員にも関わらず、誰に会うにも初対面の時は欠かさずに名刺とともに自己紹介をする、 コンピューター会社の営業から転職してきた異色の人物。 会社という組織に嫌気がさして刑事になったにも関わらず、 警察は会社以上に組織化されていて、個人の意志では身動きできないことに苛立っている。 そして、いつでも単独で事件解決に動いてしまう。 こんな青島刑事に振り回されながらも、 自己保身しか考えなかった湾岸署の人々も、事件解決の為に自分の意志を通そうと努力し始める。 一方、組織を変えたいという人間は現場の中だけではなく、 上層部である警察庁本庁の中にもいる。 それが、室井参事官（柳葉敏郎）。 東大ではなく東北大出身ということで、キャリア組の中では嫌がらせを受けている。 青島刑事と知り合い、一緒に事件を解決していく過程で、 現場と本庁との垣根を取り払い、捜査に集中できる体制にする必要性を、室井は強く感じ始める。 組織のよりよいあり方を模索して、しかし、すれ違う二人。 「正しいことをしたければ組織の上に行かねばならない」 と、室井に忠告しながらも状況が改善されないもどかしさを抱く青島。 体制を変えようと出世するものの、上に行けば行く程組織は硬直していて、 身動きがとれなくなる室井。

長々と書いたが、ドラマのテーマとなるこうしたことは、 映画ではあまり触れられてないので、映画だけでは理解できないかもしれない。 この面では、先に予備知識をつけたことを後悔している。

そして、事件がメインでないこの映画は、 サスペンスとしての楽しみを前提に話が進まない為なのか、 内容はまるでお粗末（もちろん人間ドラマとしても）。 軸となる事件が誘拐事件なのだが、 解決手段もお粗末なら犯人もお粗末。 まだ見ていない人もいるだろうから詳しくは言わないが、 「羊たちの沈黙」のパロディのような展開、 犯人もそうなら映画全体に流れる突発性。 伏線かと思ってると関係なかったり、 都合良く物語は流れ、見せ場は思いついたように突然訪れる。 これって、まるっきり、CMを挟んだ番組構成を前提としたテレビドラマの展開と同じ。 映画ではないと言うのはこうした理由。 おまけに、終始流れる音楽が耳障り。 おしゃべりしながら、または、鼻糞掘りながら見ている視聴者に向けて、 いかにチャンネルを変えさせないかに腐心したテレビドラマの造りなのだ。 まじめに見ていると、馬鹿を見るような映画である。

映画は一つの物語として隅々にまで趣向を凝らして脚本を練るべきだし、 それに促した映像を並べるべきだと思う。 事件に生じる「突発性」は、それ自体、必要かもしれないが、 「突発性」を芸術に高めた北野武の場合は、 アクションシーンでの効果としての「突発性」であり、 意外な方向から銃弾が飛んできても、 根底に太い軸を潜めた物語は理路整然と昇華を遂げる。 まあ、興行的には失敗を続ける芸術作品と、 ロングランを続けるパルプフィクションとを比べても仕方ないけど。

カップヌードルが好きな人は見てもいいけどさ、 同じ食べるなら、もっとおいしくて栄養もある物を食べたいと思う私にはどうも・・・・。 カップ麺よりも、煙草とコーヒーで空腹を満たす生活だし(笑)。(99.2.17)