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[コメント] ベティ・ブルー/愛と激情の日々(1986/仏)

何が起きようともベティを愛し続けていた彼の心情にこそ才能が含まれている。凡人が投げ出したい事を投げないでいる姿は作家の姿そのものであり、ベティと彼の燃えさかる炎の結晶。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







さび付いた彼の脳みそを活性化させようと奮闘するベティ。肉体と精神面の両方をサポートするも、彼の鈍感さ、休火山具合にキレキレのベティ。全部のコテージにペンキ塗る、それつまりエンドユーザー@大量消費社会に安住する男の衰退など見たくないという気持ちが炎として燃えさかり、ベティが敷いてくれたレールをたどるのみ。

ラスト、ベティの短き命の劫火は死してから初めて芽を吹かすのだが、森林管理の一つに、「森林火災を放置する」というのが日本じゃないけど、海外には存在する。例えばアメリカがそうだ。「アメリカ合衆国の国立公園や自然保護区では、人命や財産に危険が及ばない限り、自然に発生した火災については基本的に消火活動は行われず、自然鎮火を待つ方針」を堅持しているらしい(注意以下の文章を読むとき、下記参照を先に読むこと:URL付き)。

また、意図的に人間が火事を起こす“マネージメント・ファイアー”がある。(注意以下の文章を読むとき、下記参照を先に読むこと:URL付き)。

そう、北アメリカ大陸に広く分布するマツ類(ロッジポールパインやジャックパインなど)が彼。下記にも記してあるが、

「多少の火災では死なない厚い樹皮を持っており、また実(球果)は成熟しても数年は開かず枝に残り、火災時の高温にさらされてはじめて開いて種子を蒔くそうです。火災で開けた焦土に種子をいち早く蒔けば、日差しをたくさん浴びて、他の樹木よりすぐに大きくなれるでしょう。」だ。

多少の火災では死なない分厚い皮に守られ、温々と閉じこもっている球果なのだ。熟成していても、何年間も開かずに枝という社会の底辺に安住してしまう性質を持つ男を食い止めるのは、ベティの劫火以外この世には存在しなかった。彼女の劫火によって初めて開く種子が才能だとは、なんとも悲しい話過ぎる。

子供が産まれ、その子を抱いたベティと彼の笑顔の劫火であれば、どれだけ良かったか。でも、ベティの死が劫火となるのが自然の素顔であり、自然たる所以なのだろう。

そして見方を変えれば、彼自身が本能的に、炎の必要性に気が付いていたのかもしれない。ベティの命を救った行為がマネージメント・ファイアーといえなくもない。

この作品、地球上の自然と男女の自然を自然に描いた映画なのだろう。自然は時に優しく、時に厳しく生物にのし掛かっていくのだから。

2003/1/27

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「森林管理」(http://www.geocities.co.jp/Bookend/1803/mori02.html

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「" マネージメント ファイアー "」(http://home.pacbell.net/ykimura/yosemite/hiking/hiking04.html)

(評価:★4)

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