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[コメント] 機動警察パトレイバー 劇場版(1989/日)

松井さんが辿った行程は、かつて黒澤が『野良犬』で辿った行程。しかし、時を経て、そこには湿った悪さえなくなり、乾いた抜け殻だけが残った。歴史と文化が土壌もろとも埋め立て地の砂と化す。淡々とした悲劇。
kiona

 パトレイバーのキャラクターは本当に魅力的だ。特に第二小隊の面々。その魅力を考えてみると、全員、穴ぼこが一つずつ開いている点に目がいく。

 遊馬・・・机上的であること。つまり、あたまっでかち。

 野明・・・遊馬の反対。言ってみれば、体育会系、感情型。

 太田・・・正義という名のトリガーハッピー。

 かぬか・・・完全主義であることの不完全。

 しんし・・・まじめであること、溜め込み屋が持つ暴発の危険。

 ひろみ・・・純粋に善である事の無力。

 これらの凸凹で、後藤隊長がパズルを組み立てる過程(例えば太田のトリガーハッピーがえてして現場のカンフル剤になることを知っている。パート2の「ごちゃごちゃ言っててもはじまっかー!」などがそう。)というのが、何より面白いんです。ちなみに我が愛しのくまがみたけお巡査部長には、取り立てて欠点が無い。強いてあげるなら、内海課長である(ちなみに、俺はこいつが大嫌い)。押井が彼女を使わなかったのはパズルのピースにはならないと踏んでのことだったのではないだろうか。

 一つ難を挙げるなら、遊馬と野明の社内恋愛、近親相姦的で観ていてあまり気持ちのいいものではない。しかし、そんなことはわかっているとばかりに、このパート1では遊馬を弄ぶ。E・HOBAの悪意こそ、作家のスタンスなのだろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)秦野さくら[*] ペペロンチーノ[*] 甘崎庵[*] skmt[*]

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