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[コメント] アンナ・カレニナ(1948/英)

この原作を映画化しようと言うのは、それだけで監督の勇気の証のようなものだ。心意気だけは買おう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 ロシアの文豪トルストイの「アンナ・カレーニナ」の映画化作品で、この年のアメリカでの興行成績7位と言う華々しい実績を上げた作品。この原作はとても映画に好まれるらしく、これまでに何度となく映画化されているが(ちょっと検索してみたら10作もあった)、多分監督のチャレンジ精神を非常にそそる作品なのだろう。本作はヴィヴィアン=リーという激情の演技が巧い女優を用いてアンナを描いている。

 原作は私の最も好きな小説の一冊で、既に何度か読んで頭の中には殆ど確固としたイメージができあがっているが、あれを映画化するには相当に苦労することは理解しているつもりだ。

 原作の魅力は何と言っても執拗な程の著者の描写能力で、移り変わっていく人の内面描写と言い、素朴な、そして退屈な田舎の風景と陰謀作術に明け暮れる中枢部である都会の表現の対比など、読んでいるだけで感動を覚える描写が非常に多い。文面を追いつつ頭の中にははっきりと光景を映し出せるほど。

 ただし、それを貫く肝心の物語が、言ってしまえばコテコテの不倫もののメロドラマに過ぎない。勿論その描写も文章ならとても上手に描けているんだけど…

 限られた時間の映画だと、どうしても中心部分を分かりやすいように作るしかない。そうなるとどれほど内容が良くても、その良さを殺してしまう。それ故にこそ、この作品の映画化というのは監督のチャレンジ精神をえらく喚起するのだろう。どうやったら単なるメロドラマに終わらせないか。そこに自分の力量を見せようとするわけだ。

 本作の場合、汽車の描写にとことんこだわることで、何とかそれを避けようとしているように思える。原作でも汽車が非常に重要に物語に関わっていることも事実だし。この短い時間の中で最大限にケレン味を表現しようとするその努力は買いたい。

 だけど、この短さだとやっぱり単なるメロドラマになってしまうんだよな。特に私が一番嫌ってるパターンの…

 リーは確かに魅力あるけど、私の持っているアンナのイメージとはやっぱり違ってるし、ラストにもかなり不満。

 結論を言うと、この映画化は最初から失敗が約束されてるようなもの。その中で最大限努力をした作品。と言うしかない。それ以上の評価は私には無理だ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)りかちゅ[*] sawa:38[*]

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