[コメント] ローマの休日(1953/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この作品はヘップバーンの地が随所に出ている。例えば真実の口のシーンは実はペックのアドリブだったため、あの驚きの表情は本物だったとか、ラストシーンでの涙は、ワイラー監督が無駄になったテイクの多さを嘆いているのを見て、思わず涙したところだったらしい。
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オールタイム・ムービー・ベストの統計を取れば先ず間違いなくトップ10の中に入るだろう、そしてラブ・ストーリー部門であればほぼ確実にトップを得るだろうと言われる程の名作であり、“銀幕の妖精”オードリー=ヘップバーンの名前を全世界に知らしめた作品でもある。
私にとっても非常に思い出深い作品で、基本的にラブ・ストーリー嫌いな私がこれだけ繰り返し観た映画も珍しい。そしてこの映画こそが古き良き映画を大好きにしてくれた恩人でもある。多分これからも繰り返し観るであろう映画の一本。
元々は私の母がこの映画の大ファンであったことが事の発端。田舎で初めてレンタルビデオ店が出来た時(当時一泊二日で1500円もした)、母に「借りてきてくれ」と頼まれてわざわざ借りに行った。
当時の私は、確かに映画好きではあったが、好きなのはSFとかアクション、あるいはアニメくらいで(特撮好きだと自覚できたのはもう少し後)、白黒のラブロマンスなど、いくら有名でも食指はのびなかった。
それでも折角借りたのだし、話のネタ位にはなるだろうと母の隣で(ついでに言うなら母の解説付きで)観始めたのだが…これがなんと、思いっきり引き込まれてしまった。センスのいい笑いが随所にちりばめられ、ローマの名所を綺麗に映しているのもあるが、やっぱり何と言ってもキャラクターが良い。野心家でスクープのために嘘をつくペック。彼とカメラマンとの掛け合いも大いに笑わせてもらった(今から思うとあの役はペックらしくない役柄だったと思うのだが、元々はケイリー=グラントが予定されたと言うことで納得)。ついでに言うならアパートの管理人や「目立たないように」真っ黒な服に身を固めた男達のずれっぷりも微笑ましい。ラストのペックの表情は、ペック嫌いの私でも引き込まれるほどだ。
だけどやっぱり何と言っても圧巻はヘップバーンだろう。あの溌剌とした笑顔と言い、秘密を隠すためにもじもじする仕草と言い、サンタ・マリア教会の「真実の口」での驚きっぷりと言い、自分の義務を思い出し、しょげかえった表情と言い、最後の涙と言い、もう見事と言うしかないヒロインぶり。共演したペック自身が彼女は必ずアカデミーでオスカーを取ると確信したほどだったそうだ(ペックの助言により、この新人の女優がポスターで映画の題名より上に名前が挙げられている)。そして事実1953年のアカデミー主演女優賞は彼女の頭に輝くことになる。ただ授賞式当日、彼女はブロードウェイで「オンディーヌ」に出演中。舞台が終わると水の精の衣装のまま、白バイに先導されてセンター劇場に駆けつけたという逸話が残っている。
更に本作の脚本家についてはかなり長い間謎とされていた。クレジットにはイアン=マクレラン=ハンターとなっているが、その脚本家なる人物がそれまで知られておらず、オスカーを取ったにもかかわらずその後一本も仕事をしていないため、誰かの変名であろうとずーっと言われていた(公然の秘密だったとも言われるが)。事の真相が分かったのは何と1993年になって。ドルトン=トランボに、ハワード=サバーというUCLAの映画科教授がインタビューで「ウィリアム=ワイラーはあなたが『ローマの休日』の脚本を書いたことは知っていたのですか?」とカマをかけたところ、「どうしてそれが分かった?」と驚かれ、実は本作はトランボが脚本を書いていることが分かってしまった(彼はもう一本ロバート=リッチという名前で『黒い牡牛』の脚本賞を受賞しているので、自分名義ではない2つの脚本賞を受賞している)。これは彼が非米活動委員会により入獄させられたいわゆる“ハリウッド・テン”の一人だったため、こんな所にも赤狩りの余波が漂っていることに気づかされる。
…そう言うわけですっかり本作が大好きになり、それで昔の映画って面白いのがたくさんあるんじゃないか?と、むしろ白黒映画の方をなるべく観るようになってしまった。今となって考えるに、映画好きである以上いつかは必ずこうなっただろうけど、その一歩を踏み出させてくれたのが本作だった。そう言う意味では大感謝だ。東京に住んでいた時名画座にかかった時など、真っ先に駆けつけたものだし、LDも持っている(DVDは未だ)。レビュー書いてるだけで又観たくなってきた。
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