[コメント] シャイニング(1980/英)
オープニングから多分に詰め込まれたキューブリックの匂いを嗅ぎ取ることで、まずは安心して不安になることができる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ショッキングなスプラッタホラー映画を観て育った者としては、今作の狂気爆発までの約2時間はやはりどうしても長い気がしてしまう。だからといってこれを短くして斧のシーンをもっと引っ張ればいいのかというと、決してそうではないわけで、やっぱりこれはこれで一つ完全に完成しているものなんだなぁと思うわけです。
実際長い長いといいながらもその濃密さには驚かされるばかりで、物語や演技やショックシーンなどを遥かに凌駕する“不安”が、常に安定した居心地の悪さを提供してくれています。これはもう「不安を胸いっぱいに吸い込むことが心地いい」という特異な映画だと思うのです。
僕が一番好きなのはウェンディがジャックの原稿をめくる中で出てくる、逆三角形に改行された文章。狂った文章を羅列する狂い方は後の作品でも何度も観ており、順番は間違っているのですが正直今さらという感がありました。それを意味なく段落分けするのも、作家という職業を考えれば納得できる狂い方なわけです。でもそれが逆三角形に構築されているのを観た瞬間、ジャックは僕の想像や理解から逸脱してしまったんです。どこを探したってあんな改行をする作家はいないわけで、その時初めて「あぁ、このオヤジ狂った」と実感できちゃったんです。
確かにストーリーの半端さや恐怖の弱さは感じはしたのですが、何よりその濃密な充実ぶりに、観賞後は「何だか良いものを観た」という気になってしまいました。
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