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[コメント] 秘密(1999/日)

ミステリな意味を含む「秘密」とは程遠い仕上がり。あの理解に苦しむ大団円には絶句。事故後の描写も安易すぎる為か愛の掘り下げが甘すぎる。主演2人は好演していただけに惜しい。しかも平介の視点のみで貫き通さねばならないものを…何故?
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あまり原作との比較はしたくないので突っ込んだ指摘は避けるけれど、一つ言わせてもらうならば、「平介の一人称あっての“秘密”」ではないかということ。確かに原作は三人称で語られていくのだが、重要なのは「ほぼ平介の視点」ということであり、藻奈美や直子の主観には一切振られていないということである。三人称なので平介の直接的な内情は語られないものの、その構成が上記のように平介の視点にある為、読者は平介の主観を同時進行で掴んでいくことになる。そういう訳で、一人称に限りなく近いのだ。対してこの映画は、完全なる三人称であった。原作になぞるという意味では、平介の視点が大半を占めているのだが、藻奈美の姿をした直子が過去を振り返ってみたり不必要な場面が多い。それでは肝心の「秘密」のミステリーな魅力が薄れてしまうはずだし、平介への感情移入も浅くなってしまう。広末を意識した作りは当然といえば当然だが、平介の視点のみで語られる「直子を演じた広末」というのも魅力的で良いのではないかと思う。

評判どおり、結婚式場での場面は最悪だ。海辺での切なくも温まるシーンが突如として冷める。まず、結婚相手に梶川の息子というのも、映画である以上仕方のない面もあるのだが不満が残る。これは事故の経過が曖昧なためにこじつけることのできたオチであることに間違いない。もしも事故で失われたものへの掘り下げが成されているのならば、果たして直子は梶川との結婚をするのか疑問である(原作のほうはそもそもの設定が違うために、非常に緻密な展開になっているけれど)。そして、タイトルが何故「秘密」であるのかを示す重要なシーンに「平介の確信」があるけれど、これでは秘密ではなく、単なる「ネタばらし」だ。それも低レベルな。クマのぬいぐるみを見て確信を得て、それを口頭で直子に言ってしまうのは流石にいかがなものかと思う。しかもだ、その後に「殴らせてくれ」「ドスッ」………おい、殴るなよ。「秘密」の余韻を台無しにしてしまう、なんとも情けないシーンである…。

やはり広末無くしては存在することのできない映画だったのか?ラストシーンではそれを本気で思ってしまった(確かに、平介が「言う」「言わない」「殴る」「殴らない」で物語の余韻が大きく左右するのだけど)

いろいろ悔やまれる、惜しい作品でした。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぐ〜たらだんな[*] torinoshield[*] ナム太郎[*]

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