[コメント] 惑星ソラリス(1972/露)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
●惑星ソラリスを覆っている海は、思考力を持った物質で出来ており、人間の記憶や潜在意識を物質化してしまう。池の水が印象的な冒頭のシーンや、ソラリスの奇妙な海、ラストのお湯が滴るのシーンなど、「水」が重要なキーになっていた。地球上で生命を生み出した海。生命の源。創造主・神。 そして映画の中ではソラリスの”海”が複製の”お客”を生み出す。生命の源のイメージのままに、ソラリスの海が奇妙で美しく巧みに表現されている。
●「“複製物(コピー)”を人間として扱うのは良心的なのか?科学者としてそれらを単なる物質として無視するべきか?何度でも生き返ってしまう”お客”を人間として扱えるだろうか?しかし人間らしい感情を持ち、考える彼らに対して人間として接するべきではないのか?」 ・・こうして再び、「人格、アイデンティティーとは一体なんだろうか」というテーマについて考えさせられる(『ブレード・ランナー』『13F』等の様に)。 複製のハリーは、自らのアイデンティティーについて悩んだり、クリスを愛したり、「お互いの為に」とクリスの元を去ったりする。一体これらのどこが人間と違うと言うのだろう・・。
●自殺した妻に対して悔恨の思いを抱いていたクリスは、複製のハリーと愛し合うようになる。 また何故か妻と同じ姿で母も現れる。そうやって現れるという事は母とは何かしらのわだかまりがあったのではないかと推測する。そして腕を洗うシーンで心が通じ合う(様な雰囲気だった)。 そしてラスト、やはり複製の父親が複製の家の中にいるが、このシーンもどこか奇妙ながら安心感と温かさを感じる。 こうしてクリスは心の中にある罪の意識から解放されていた。ソラリスの海によって解放されたのだった。自分自身が罪から解放されるには「愛」以外に有り得ないという事ではないだろうか。
●「宇宙探険にあくせくするのは、風車に突撃するドン・キホーテと同じだ。別の世界は理解できないし必要もない。我々に必要なのは鏡だ。」という台詞があった。正にソラリスの海は彼ら自身を映す鏡だった。
とても哲学的であり、宗教的な意味も感じるストーリーで、全てを理解するのは難しい。これは原作を読まなきゃ駄目ですね。しかし個人的に好きなテーマだった。 ・・3時間近くもあったのが唯一辛い・・。
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