[コメント] 無防備都市(1945/伊)
あまりに劇映画然としていて驚いたものだ。制約の多い状況下で作られた映画とはとても思えない立派な画面と語り。演出には洗練されたケレン味があって、まるで良質のハリウッド映画のよう。たとえば「ドアー」の演出。また、この題材に男女の大したメロドラマまで組み入れてしまうのだから恐れ入る。第一級の娯楽映画。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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悪役の造型について。ハリー・ファイストのナチス将校ベルイマンの造型は平面的すぎるきらいもあるが、それは「ドイツ人は本当に支配民族か」と疑問を口にする別の将校によって相対化されている。一方ジョヴァンナ・ガレッティ演じるところのイングリッドという身分不詳のナチス女の底知れぬ恐ろしさは何だろう。ガレッティがこの映画の「悪」を担っている。(ふたりの姓名を繋げるとイングリッド・ベルイマン[バーグマン]になるという点には興味を惹かれないでもありませんが、さほど珍しい姓名というわけでもないのでしょうから、まあどうでもよい指摘でしょう)
ラストシーンについて。「映画」における残酷さとは、必ずしも神父が銃殺されるという出来事自体が生むのではない。白く抜けた空の下、一脚の椅子がぽつんと投げ出されただだ広い草地でそれを繰り広げさせるという空間演出こそが真に残酷なのであり、心を打つのだ。確かに現実の戦争は残酷であり、理不尽な処刑もまた残酷であるだろう。しかしこれは映画なのだ。すべての映画は劇映画である。ロッセリーニはそれを忘れていない。だから「映画」は「現実」を撃ち抜く。
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