[コメント] 黒いオルフェ(1959/仏=ブラジル)
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ギリシア悲劇として有名な「悲しみのオルフェウス」の話をラテンのリズムと融合させて完成させた快作。ラテンのノリが実に素晴らしく、画面からもその圧倒的なパワーを感じられる。
実はたまたまオカルト関係の本を読んでいた時に本作のことが紹介されており、レンタルで置いてあったを発見し、すぐさま拝見。基礎知識は入れてあったとは言え、ギリシア神話とラテンリズムとの融合という大胆な組み合わせに最初は驚かされたが、それを越すと素直に素晴らしい音楽を楽しめるようになった。
ストーリーについては実際にギリシア神話のままとは言え、後半に登場する謎めいた人物やオルフェの精神的な徘徊など見所も多く、音楽の再生で終わるラストは心地良い余韻を残してもくれる。
死んだ人は生き返らない。その当たり前の事実を否定しようとするのが人の心というもの。結果的に一番幸せなのは死んだ者に続いて自分も死んでしまうことなのだろう。救いを内包してこその悲劇だ。そして芸術が神の心まで動かせるはず。と言う思いを持つのも古来から存在する。まさに「悲しみのオルフェウス」はそれを真っ正面から捉えた作品なのだが、それを見事にこの作品でも表していた。オルフェがギターを爪弾くと、太陽が昇る。彼の音楽は自然さえも動かす程だった(ルイス・ボンファによる『カルナヴァルの朝』)。そしてラスト、こども達がオルフェと同じ事をする。人は移り変わり、決して一つ所に留まることはないが、音楽に託した彼の精神は生き続けるのだろう。
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