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[コメント] 愛に関する短いフィルム(1988/ポーランド)

誰が何と言おうと「これは純愛だ。」と感じた。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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19才の少年トメクは、向かいのアパートに住む年上の女性、マグダに恋をする。彼は、夜ごと望遠鏡で彼女のすさんだ生活をのぞく。ある日、彼は彼女に愛を告げ、望みは何であるのかと問う彼女に「何も望まない。」と答える…。

「見つめる」という行為からはじまった愛は、やがて「見つめられる」という行為からも愛をうむ。けれどもその「見つめられる愛」は、「見つめる愛」とはいささか違ってもいる。この場合の「愛」には、「見つめられたい」「見つめられていたい」という「相手に期待を寄せる思い」が隠されている。

おおかたの人が抱く「愛」とは、そのようなものなのではないだろうか。(相互に)「与えあい」「奪いあう」ものが「愛」だと言ったところで、いったい誰が非難されよう。

それだからこそ私は、このトメクの(稀有な)「見つめるだけの愛」に胸をしめつけられ、深いため息をつかずにはいられなかった。そこに、打算や肉体を越えた「愛」を見たからだ。

ドキュメンタリー出身のキェシロフスキーは、はりつめた緊張感とやわらかな叙情性を併した、素晴らしい(ただの)「純愛映画」を誕生させた。

そしてまた、それはありきたりの「恋物語」などではなく、あくまでも「愛に関する」短い、そして切なく美しいフィルムでもあるのだ。

*10年以上前の初見時のメモより@年末の大掃除中に

(評価:★5)

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