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[コメント] 郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942/伊)

ジーノはヒッチハイクで旅をする男。マッシモ・ジロッティ、34歳頃。惚れ惚れするようなルックスと思う。ロードサイドの食堂の太ったオヤジ、ブラガーナとその妻のジョヴァンナ。このクララ・カラマーイという女優は、32歳頃。
ゑぎ

 ジーノが最初に食堂に入っていくシーンで、クレーンショットを使ったり、歩く足に犬をまとわりつかせたりと勿体ぶる。初監督作とは思えない堂々たる演出だ。そしてジョヴァンナの登場は、キッチンのテーブルに腰をかけて、ぶらぶらする脚から。カラマーイという女優はイマイチ美人でも肉感的でもない、普通の女性といったルックスがいい。ジーノとジョヴァンナはすぐに関係を持つ。

 ジーノはジョヴァンナに、一緒に駈け落ちしようと誘うが、ジョヴァンナには勇気が出ない。一人旅に出たジーノが出会うのが、通称スペイン人と名乗る、大道芸人で彼の役割も重要だろう。彼とジーノは宿屋の一つのベッドで一緒に寝る。お行儀よく並んで寝る場面で暗転するだけだが、男娼的なものを示唆していると感じられる。

 ジーノとジョヴァンナ(とブラガーナ)が再会するのは、彼がスペイン人の商売(大道芸)を手伝っている、お祭りの場面。こゝのモブシーンも見事な画面だ。特に素人オペラ歌唱大会が行われる酒場の造型がいい。「ハバネラ」や「耳に残るは君の歌声」が唄われる。その帰り道のシーンから、唐突に土手下に横転している車を繋ぐ構成は、本作の繋ぎの特徴をよく表しているだろう。意図的に、普通なら見せ場となる場面をカットするのだ。ただし、おかげでプロットのブツ切り感も否めないとは思う。

 あと、本作にはもう一人、ジーノとすぐに寝る人物が登場する。ジョヴァンナが保険会社(ミラノ保険会社という看板があるが、多分、町はミラノではないと思う)から出て来るのを待っている場面で知り合う自称ダンサーのアニータ。彼女のアパートのオバサンが、今はいないが、部屋で待っていればいい、なんて見ず知らずのジーノに云うのも示唆的だと思われる。

 そして、警察を巻くため、アニータのアパートから屋根伝いに逃れたジーノが、川の岸辺の砂州のような場所で、追ってきたジョヴァンナと抱擁する場面(ちょっと途中のプロットは端折りましたが)。ジーノの改心には勿論理由がある。しかし、唐突な心変わりにいたる展開がワザとらしい作劇だとも感じられるが、広大な川辺の、奥行きのある画面はいい。また、ジーノがジョヴァンナを抱き上げて運ぶ演出も違和感を覚えるが、これはラストシーンと呼応する。もっと云えば、ラストでジーノがジョヴァンナを抱きかかえて運ぶショットでも、ジョヴァンナの手足がぶらぶらしており、彼女の登場シーンが思い出される。

(評価:★3)

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