[コメント] 鏡(1975/露)
私がタルコフスキーを好きになりきれないのは、彼がバリバリのアクション映画を撮る資質に恵まれていながらじゅうぶんにそれをしなかった、という点に尽きる。出版局シーンのカメラワークと人物の動かし方を見れば、そのアクション演出家としての腕のよさは瞭然である。それを認めないのは観客の怠慢でしかない。
また「風」の吹かせ方にかけてはチャンピオン級であることも潔く認めよう。ただ「草木が風にそよぐ」だけで動画像は「映画」になるという確信。タルコフスキーはまったく度胸の映画作家であった。あるいはもっと格好をつけて、ルイ・リュミエールにも通じるところの映画への始原的まなざしを持っていた、などと云ってもよい。「列車が止まる」「工場から人が出てくる」「親子が食事をしている」それだけで映画は成立してしまう。したがって映画とはどこまでも「どう撮るか」の問題系なのだ。タルコフスキーほどそれを強く意識していた演出家は決して多くない。その点もまた、観客個々人の趣味嗜好を越えて認められねばならないところだろう。
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