[コメント] アンドレイ・ルブリョフ(1967/露)
時代を超越して芸術と精神の解放が叫ばれる。タルコフスキー作品で唯一群衆が描かれた映画。なおかつストーリーとしても最もわかりやすい映画でもある。最後のシーンは感動的だ!
イコンという題材が古典的なようで、実は未来を予感させる。このテーマをモノクロで敢えて残したところに、映画史上の貴重な意味がある。
この修行とも言うべきルブリョフの行を我々は映像で体験できるのだ。夢を見て旅をする者達と裏切り、誤解、それを自分の罪として自分を責めるルブリョフの姿に思い上がった現代の排他主義とか競争社会の荒廃した人々の姿が重複して悲しくなってくる。
タルコフスキーの映画は詩的であり”死的”でもある。行く末の死を予感させる映像が必ず印象的に描かれる。それは、彼自身の、というよりも彼を含めた未来への予言であり予感だったのだろう。
また、彼の世界観は日本的でもある。この映画にも『方丈記』と思わせる流れが展開され、『方丈記』にも言われている”行く川の流れ”がこの映画の大きな支柱となっている。タルコフスキーが鴨長明を研究していたかどうか定かではないが、この映画の中盤は国の飢餓を描写し、そこに芸術の意味と価値を見いだそうとするルブリョフの無言の姿は、鴨長明を彷彿とさせる部分がある。
これは見るものにもルブリョフと同じ苦行を与える映画だ。従ってこの長時間にわたる鑑賞を終えようとする瞬間に希望が生まれる。これだけの映画を作る側のことを考えると、現代の苦行でありタルコフスキーが内面的にルブリョフと重なっている姿を想像せざるを得ない。これだけの大作を作り終えた彼はさらに哲学的、神学的な世界へ自分を追い込んで行く。
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