[コメント] 刑事ジョン・ブック 目撃者(1985/米)
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だが最後には、ジョンが世話になった老人が、少年を諭して言った、銃を手にすれば心が悪に染まる、悪人を殺せば、彼らと同類になってしまう、必ず暴力以外の手段がある筈だ、という教えに沿った結末がもたらされる。少年が老人の指示に従って鳴らした鐘の音に集まったアーミッシュ達が悪徳警官を取り囲み、彼は銃を捨てて降参するのだ。
『コラムニスト:サラの選択』(『Saving Sarah Cain』)という映画で知ったのだが、食事の際にゲップをするのは、アーミッシュの習慣で、美味しかった、という挨拶のようなものであるらしい。目撃者である少年サミュエルがバーガーショップでゲップをするのもそういう意味なのだろう。
地味だが手堅い演出、という手法は、この作品の場合は特に内容によく馴染むものだった。特に印象的な、ジョンがサミュエルの母レイチェルと別れる時の、二人の切り返しショットでも、ジョンの後ろには彼が帰る路が見え、レイチェルは戸口に立っている、という構図で、二人の立場がさり気なくそれとして視覚化されている。思えば、ジョンが乗って村にやって来た車の色も、淡い空色で、決して村の風景の中で違和感を生じさせるような派手な色ではない。後から思えば、この車の色が既に、ジョンが村に馴染んでいく事を予告していたようにも感じさせられる。
また、悪徳警官達が村に乗り込んでくる場面でも、老人の運んで来た牛乳が零れるショットが見える。ここで、彼がジョンと共に牛乳絞りをしていた場面が、詩的な伏線として活きてくる。つまり、ジョンが災いを持ち込んだのではなく(当初、ジョンはそう言われて迷惑視されていたのだが)、ジョンとアーミッシュ達が築いた友情に暴力的に割って入られたという事だ。それが示されてあるからこそ、最後にアーミッシュ達が集まってジョン達の危機を救う場面もいっそう感動的なものとなる。
アカデミー賞で編集部門を受賞したのも頷ける、緩やかで詩的なリズムを持った作品。アクションやサスペンスも、アーミッシュの村の牧歌的な雰囲気を破壊しない程度に控えめだが、観客を退屈させずに惹きつけるスパイスとして利いている。それに音楽の、茫洋とした空気感を醸し出す、シンプルだが効果的な作りも良い。
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