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[コメント] カリスマ(1999/日)

「なんでこんなことに関わってるの? あなたの人生に何の関係もないことじゃない」と言われて「うーん。何でだろう。よくわかんないけど、いいことだと思ってさ」
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







…という台詞を聞いたとき、中東の戦争にやってきた日本の姿を連想した。監督が10年くらい構想をあたためた作品らしいけど、逆算するとちょうど湾岸戦争が起こったころだし、案外あっているかも?と思った。

世界の法則をうちたてるべく外から運び込まれた、民主主義だか西洋合理主義だか、なんだかかの「主義」は、一見優しそうな顔をしていて、実は自分さえ生き延びれば良いと考えているたちの悪い存在だ。近づけばその毒素で枯死するのにみななぜかそれに惹かれて寄り添おうとする。多くの人が1本1本の木ばかりを見て、森全体のことを見ないのはおかしいと、「主義」を排除しようとする人。その「主義」に従うことこそ正義、そこに属さず自由であろうとするのは不健全だ。「主義」を守るためには「軍隊が必要だろ?」と「主義」が土地に根を張るまで守ろうとする人。「主義」に利得を見出す人もやってくる。森を守ろうと植栽をしていた無名の衆は、武器を手渡されレジスタンスへ。そしてトラックの荷台からベレー帽を投げ捨て解放軍からテロリストへ。武器(拳銃)を持って現れたスタンスのはっきりしない男。「世界の法則を回復しろって言われたんだけど、どういうことなんだろね」。

そう見ていくと、寓話なんだとしても、かなりそのまんまという気がする。

もし、帝国が破れ、日本だけがそこに残され、その場のイニシャチブを握るようなことになってしまうという状況の恐ろしさが、第2のカリスマをめぐる物語の示唆するところだろうか? 「もうひとつ主義っぽいのがあったんだよ、これでいきましょうよ」「これってただの枯れ木ですよ」「手当てしてやればこの木も蘇るかも知れない」「だめだボクにはついていけない」「それを買おう」「どっちが生き残るべきか?なんて議論するのが間違っているんだ。どっちも生き延びればいいんだよ。じゃ、失礼します」

「お前いったい何をしでかしたんだ?」っていうような展開になったんじゃないか? という当時の監督の直接的な危惧の表れだったように思う。

なぜ10年もたってから映画化したのか? 一度強い制作意思を持ったものって、作っておかないと先に進めない、って感覚があるんじゃないのかな? 思い入れが強かったりして。「うーん哲学っぽくもあるし、今日的テーマといえなくもないし(作っても)いいんじゃない」こんな感じかな。

(評価:★4)

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