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[コメント] ロゼッタ(1999/仏=ベルギー)

「見ろ!」という叫び。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







失敗した。これはスクリーンで観るべき映画だった。かなりの集中力が必要だ。だってハイタカさんのreviewを読むまでラストでロゼッタが自殺を図ろうとしていたことに気付かなかったんだもの。決してぼけっと観ていた訳ではないんだが・・・。

ただ、ラストで僅かな救済(?)が仮にあったとしても、私の考えはあまり変わらない。すなわち、この映画は「ドラマ」に対するアンチテーゼだと思うのだ。簡単な面からいえば、明確な「始まり」と「終わり」がない点だ。一見しただけではそれとわからない。唐突に始まり、唐突に終わる。

まるでフィルムの最初と最後の部分だけ無作為に切り取ってしまったかのように。

この始まりと終わりの唐突さ、ぶっきらぼうさは逆に映画の(あるはずのない)「始まりの前のシーン」と「終わりの後のシーン」を私に強く意識させた。

つまり私は「彼女の一生の一時期を出鱈目に選択したような感覚」を受けたのだ。それと、通常の映画にはみられない非完結性によって、逆に映画らしさを、映画を観ているという感覚を受けた。彼女の変化だとか感情だとかを細部に渡って考える類の(そして貧困云々について考えるものでもなく)作品ではないと思う。飽くまで全体的な、映画『ロゼッタ』そのものを、そしてロゼッタを感じとった。

言葉にしづらい・・・。えーと、ロゼッタを感じて、彼女の存在を、とにかく彼女を見て・・・みたいな。ロゼッタを見るための映画なのだ。ドラマティックでない映画の主人公から滲み出る強い存在感を感じる映画なのだ。

別の角度からいえば、セリフを極端なまでに絞り込んだ演出。巧い。こういう映画好きです。これはもちろん彼女の孤独さからもくるのだろうけど、それだけでなくセリフに邪魔されたくないという監督の意思があるように思えた。言葉も当然大切な要素だが、何よりもまず「彼女を見てくれ。彼女の動きを、表情を!」というメッセージなのだ。たぶん。

(評価:★4)

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