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[コメント] 不良少女モニカ(1952/スウェーデン)

「匂い」のする映画。噎せ返るような夏草の匂いがするモニカ。花梨の皮のように、北欧の短く儚い夏の光をも弾いてしまうモニカの肌。
muffler&silencer[消音装置]

そして、ちぎられた夏草の匂いも、もぎとられた花梨の色も、その切り取られた瞬間こそ、最も絶頂のとき。あとは、薄れ、褪せていくしかない。

あのラスト近くのモニカのまなざし、そして、鏡に映ったハリーのまなざし。そのまなざしの中に、どんなことばでも言い尽くせぬ、短い夏と青春を駆け抜けたふたりの万感交々至るそのことばを見る。

また、自然な流れの中で、刻々と変化する空や雲と海、蜘蛛の煙突、巣、梟など、幾重にも重ねられた象徴的なショットの数々、その挿入された行間もまた胸に眩しい。

とにもかくにも、これほど、「匂い」がして、また「まなざし」を感じる映画は稀だ。

余談:

スウェーデン語の原題は「モニカとのあの夏」となるそうです。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)tredair[*] ina

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