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[コメント] ぼくら、20世紀の子供たち(1994/仏=露)

歌が好きなカネフスキー。
saku99

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前2作で主役のワレルカを演じたパーベル・ナザーロフ。彼が出てくることにこのドキュメンタリーのすごさがある。普通の国では国際映画際で賞をとればセレブの仲間入り。それなのに、何の罪かはわからないが、翌年には収容されているのだ。

現実のパーベルは、映画のワレルカよりも壮絶な人生のようだ。何千人もの少年の中から選び出したらしいが、13歳にしてタバコをくわえ、たくさんの女の子を引き連れていたそうな。鉄格子の向こうに映ったときの、パーベルの無表情。監督も「怒ってる?」と聞いてしまっている。その後はにこやかに話し出したが、あの最初の無表情さが、普段のパーベルなのかもしれない。

そしてパーベルとヒロイン役のディナーラ・ドルカーロワの邂逅。二人は本当に愛し合っていたかのように語りあう。その親密な雰囲気と状況の異常さがロシアという社会の矛盾を映し出しているかのよう。

もちろん、ドキュメンタリーとは言っているものの、脚本・演出はあるのだろう。そこはN○Kだって同じ。海辺で歌う少年二人が急に「泊まっていい?母はアル中なんだ」とかいうシーンはあまりにも棒読みでそらぞらしい。ナイフを持った少年たちが、いきなりカメラを持って入っていって、話してくれるとも思えない。みなカメラの位置から映りやすい所に自然に座っているのがおかしい。まるでダヴィンチの最後の晩餐のように。リハーサルをしている姿を想像すると、ちょっと面白い気もする。

やたらと歌わせようとするのもなんかいらいらした。前2作でもそうだが、ロシア語でいきなり大声で歌いだすと耳障りだったりする。

ともかく、ドキュメンタリー映画の傑作といえるだろう。パゾリーニの「愛の集会」よりも面白い。パーベルの存在あってこそだが。この作品がロシア社会に衝撃を与えたのではと容易に推測できる。

気になるのは、監督がパーベルに対して「次の映画の脚本はできている」と言っていたことだ。「20世紀の子供たち」以降はドキュメントを1本残して失踪しているらしいが、どうしたんですかね。そして現在のパーベルは何をしているのだろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)G31[*] veranita

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