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[コメント] ショック集団(1963/米)

探偵物として上首尾に仕上げることには興味を示さず、演技のみに頼らない多角的な「狂気」の造型にもっぱら精を出している。膨大な量の心内発話(ヴォイスオーバー)に唐突なカラーシーンの挿入。そして何と云っても「廊下」! キャラクタではオペラ野郎ラリー・タッカーが最高。面白すぎる。
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まさに衝撃的な「廊下」の映画。陳腐な云い方になるけれども、廊下こそがこの映画の主役だ。廊下が狂気を象徴し、視覚化し、増幅している。原題は正しい。

ところで、例によって自らの無知・不勉強を棚に上げて云うが、この廊下を作り上げた張本人であろうユージン・ルーリー(ウジェーヌ・ルリエ)とはいったい何者なのだろうか。ジャン・ルノワールのフランス後期からアメリカ期にかけての傑作群における仕事が最も知られているのだろうが、マックス・オフュルスの三〇年代後半の作品にも名前がある(もちろん私は見ていません)。アメリカに渡ってからは『ライムライト』や、このフラーの『ショック集団』と次作『裸のキッス』で美術を担当している(撮影スタンリー・コルテスとの協働作でもありますね)。また監督としては四本の特撮映画を撮っており(『原子怪獣現わる』『ニューヨークの怪人』『海獣ビヒモス』『怪獣ゴルゴ』。もちろん私は見ていません)、人によってはこちらのほうで記憶される人物なのかもしれない。七〇年代はテレビに活動の舞台を移していたようだが、どうやら遺作はクリント・イーストウッドブロンコ・ビリー』であり、驚く(あの星条旗のテントも彼の仕事なのだろうか!)。そしてさらに驚愕するのは、生涯の最後に関わった映画という意味での真の遺作が、美術でも監督でもなく出演者としての『ブレスレス』であるということだ(まったく憶えていません。ただの端役だとは思いますが……)。

第二次大戦前後に米欧を往来した映画人にはわけの分からぬキャリアを持った人が多いというけれども、それにしても『ゲームの規則』『』『ライムライト』『ショック集団』『ブロンコ・ビリー』の美術を手掛け、自ら怪獣映画を撮り、『ブレスレス』に出演して生涯を閉じる映画人とは、いったい何がどうなっているのか。ほんと、映画ってなんでもありだよな〜。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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