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[コメント] 白い花びら(1999/フィンランド)

原節子の『西鶴一代女』。サイレント映画というよりインスト映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







フィンランドの国民的作家が原作だそうで、これで4度目の映画化になるという。日本で言えば『伊豆の踊り子』みたいなもんだ。 カウリスマキはこうした“文豪”に手を出すことが意外と多く、ドストエフスキーやシェークスピア、プッチーニが歌劇にもした原作やスタローンなんかもやっている(<最後のは関係ない)。

善きにつけ悪しきにつけ、これら文学作品はカウリスマキに影響を与えているようで、それ自体を映画化しなくとも、もう充分に彼自身の血肉になっていると思う。 要するに、この原作の精神は既に『マッチ工場の少女』でやってることに思える。

じゃあ何をやりたかったかと言えば、既に3度も映画化されてフィンランド国民誰もが知る(のかどうか知らないが)“枯れた(=解釈・表現の出尽くした)”原作に、新境地を開こうとしたのではないだろうか。その手法が“サイレント”。まあ、サイレントがやりたくてよく知られた話を選んだのかもしれないが。

その一方で、サイレントそのものよりも“音楽”の表現力の可能性を探っているような気もする。 それは、過剰なまでの音楽が、いつものカウリスマキ映画の(少ない)台詞より雄弁に感じられたせいかもしれない。 だが、カウリスマキは常々“歌”に意味を持たせてきた。主人公の心情を歌詞で表現したりしてきた。 そして本作では、主に音楽だけでその場の雰囲気を盛り上げようとしている気がする。

今となっては“前衛”とも言える手法だが、当のサイレント時代にはもっともっと前衛的なチャレンジが多くあったことを考えると、なんだか複雑に感じる。 既に血肉となっている原作を扱ったことと併せ、本当にこのチャレンジは成功だったのだろうか?

余談

映画館で澤登翠さんの活弁付き特別上映で観たのだが、活弁は邪魔ではなかったが必要でもなかった。ちなみに澤登翠さんはカウリスマキの大ファンだそうだ。

(評価:★3)

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