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[コメント] 顔(1999/日)

不細工で不格好、しかも殺人者、そんな女なのに愛おしく感じてしまう。現実を受け入れた瞬間から、現実が彼女を魅力的にしていく。
しど

自分の殻の中で現実を拒絶した生活の主人公は、陰気で無気味、他人からも拒絶されている。ところが、「殺人」という現実との接点を境に、強制的に自分の殻の外へ出されてしまう。

現実社会の中、少しずつ生きる術を学びながら、繰り返し「人の死」と「警察からの逃亡」による人生の岐路を飛び越えることで、加速的に人間味を得ていく彼女は、その度、魅力も増していく。

「強姦」と「恋」との相対的な関係も、同様に、彼女の魅力に磨きをかける。

「殺人犯」と「女神」という二面性は、アンビバレントな関係でもあり、両面が近付き反発して離れることで躍動を生み、主人公の変化は加速度を増すのである。だからこそ、海の中でもがく彼女は美しい。

死と生との複雑な関係を、表情の変化で表現できた藤山直美は素晴らしい役者である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)マグダラの阿闍世王[*]

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