[コメント] フルスタリョフ、車を!(1998/仏=露)
どう考えても現実的だと思えない、でっちあげられた、演劇的と云ってもいいくらいの混沌と猥雑さ。それを見事な統制力でもって映画の画面にしている。家屋の中や病院の中も迷路というかカスバのような訳の分からない構造になっており、廊下の柵を飛び越えるのが通常ルートになっていたりする。
老若男女、階級の差を越えて、怒鳴りあい、ふざけあう。とにかく狭い部屋に人が沢山登場する。多くの人がカメラ目線で一言つぶやく。パンニングやティルトで素早く被写体を追いかける。訳が分からない。だから面白い!
しかし、開巻の夜の道の画面等、夜の光は悉くとても美しいし、この冒頭カットで犬が駈けて来るが、その足音にも興奮する。また、エピローグ、もっと云えば、ラストカットも面白い。実は、スターリンの挿話の後、タイトルの種明かしが出て、主人公がぐったりし、緩急の緩でもって、こゝで、エンドかと思った。(こゝで、エンドが良いと思った)。なのにエピローグが続くので、蛇足の感もしたのだが、いやラストカットで落ち着いた。ファーストカットとラストカットが共にかなり良くできたロングショットである、というのも本作の類まれなる統制力を感じる部分だ。
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