[コメント] 沈黙(1963/スウェーデン)
映画を見終った人むけのレビューです。
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見知らぬ町。情報から疎外された三人。情報から得る知識がないその世界では時間もない。ただ沈黙が横たわるのみ。その世界での三人の行動はそれぞれ。
情報から切り離されたまま自分の世界にはいっていくアナ。誰もいない世界では自分の意志だけが頼りだ。自分の意志に、欲望に忠実なアナ。彼女の世界に他者はいても、ただうごめくだけ。記号や道具でしかない。子供の面倒くらい見なされ。
「みじめなままは嫌だ」ともがくエステル。彼女の方が自己完結型なのかと思ったけれど、違うみたい。子供もいないし、孤独を感じているらしい彼女は必死に他者との交流を求める。たぶん翻訳の仕事もその一環じゃないかなあ。言葉による他者との交流。言語こそは、見知らぬ世界を解き、他者を受け入れるための鍵となるはずだから。
二人の間にいるようなヨハン。初め母親にべったりで、いいように使われていたけれど、彼は彼なりに少しずつ周りの人と交わるようになる。エステルと向き合い、会話までする。
彼がつなぎとなって、姉妹の間にあった沈黙が破られる。アナの告白。はっきり言葉に出されたそれを、エステルは受け入れる。「あんたはかわいそうね」と。彼女が望んでいた言葉による他者との交流。沈黙が破られた姉妹の間では時が動き始める。じゃあ、死期の近そうなエステルさんは死ぬしかありません。
エステルからヨハンへの手紙。彼女の求めてみつけた「言葉」が書いてあるみたい。エステルの告白。母親からとっさに手紙を隠す。母親を見るあの目つき。ヨハンの時も動き始めた。
「神の沈黙・三部作」なのに大いにカミサマを無視したレビュー。まあいいや。ところで、あのホテルのお爺さんとの会話の中に「精神」なんて言葉が出てくるのかなあ、とおおいに疑問。
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