[コメント] バトル・ロワイアル(2000/日)
(原作のことはほとんど知りません。映画のみの感想です。)
つけあがる子供への脅かし(説教)のつもりなのか、仮にも「中学生同志を大人の恣意で殺し合いさせる」なんて扇情的な題材をとりあげる以上、作り手側は自分たちが「なぜこれを撮りたかったのか」はっきり姿勢を打ち出すべき。
1)子供にアタマのあがらない大人たちの溜飲を下げるために作りました。 2)クラスメートが各々異なる特技やアイテム、HPをもってバトルし合うゲームっぽい設定が、映画としては新しく面白そうだ。 3)制服姿の女の子(中学生でも高校生でもいい。この映画の制作者ってその辺の違いを意識して作っていたのだろうか。単に「制服」が重要だったのでは?)に機関銃を持たせたい。あるいは銃弾を撃ち込んで血まみれにしてみたい。 ※1)〜3)はちょっとはこういう考えもあったと思うが、マニア向けのインディーズ作品ではないのだから、前面には押し出せない。ただ1)なんかだったら「バトル」をテレビ中継かなんかで見物している大人たちの描写を見せたりすれば「風刺」的な表現と受け止められ、批判をやわらげられるかも知れない。
4)もし極限状態におかれた時、あなたならどうするか考えて欲しい。 5)あなたは自分が生き延びるために友達を殺せますか? ※殺人の是非を極限状態で問うたら、大概「OK」ってことになるんじゃないか?それがいけないとかなんとかになると、もう、生物的、宗教的、哲学的な領域。そこに踏み込もうという意図はあまり感じない。「殺人の是非」は異状時と通常時では意味が違ってくると思う。
6)あまり自由ばっかり主張しているから世の中崩壊するのだ。そんなことを続けていると「国家」は抑えにかかってくるぞ。そうなったら君たちどうする? ※だったらナショナリズムの怖さを感じさせてくれるものとしての「BR法」があって欲しかった。これについて説得力のある説明があればぐっと面白くなったのに。でもそんなの無理だろうな。この法律の理屈がわからない。(原作ではなかった設定?映画で時短のために作ったのだろうか?)
7)最近の子供の「死に対する非現実的な感覚」を等身大の登場人物の物語を通して身近に考えてもらいたい。 ※いじめとは言えない暴力を振るったり、人が死ぬことを「壊す」とか「潰す」とかいう子供(一部大人)に生(ナマ)の命の感覚を持って欲しい、というのならあんな劇画的な描写じゃ逆効果。却ってみんな死に様がかっこいい気がする。プライベートライアンぐらいやればいいのに、R指定が頭をよぎったのか?でもそれならハナからこの企画は無理だったのでは?
他にもあるかも知れないけど、なんだか中途半端なアクション映画になってしまった感じ。いろんな思惑や制約が作り手側を迷わせて、だんだんどういうものを作っていいのかわからなくなっていったのだとは思うが、「あとはみなさん自身で考えてください」って逃げていい題材じゃない。難しい題材であるということは百も承知で、それなりの覚悟で作って欲しかった。
あと個人的には、クラシックの選曲がCD名曲集のような安っぽい印象で、そのことが作品のイメージに余計悪い印象を持つことになったかも知れない。
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