[コメント] 救命艇(1944/米)
大海原にぽつんと浮かぶ一艘の救命艇。この広大かつ狭小な空間をいかにカメラで切り取り、またそれを配列するか、ということがここで取り組まれている主要な問題で、それに対するヒッチコックの回答ぶりには感心することしきりだが、興奮までは覚えない。照明ほかオーソドックスな技術の水準の高さは云うまでもない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
キャラクタの面白さはドイツ兵ウォルター・スレザックのそれが際立っている。構造的に云えば「外部」であり圧倒的な「力」を持った者としてあるスレザック。その彼を受け容れていく仕方、彼に操作/支配されていく仕方、そして彼を放逐する仕方。この種の設定であれば常套と思われる「サバイバルに執り憑かれた人々の狂気」は描かれないが、スレザックを中心にドラマを眺めたとき、何やら神話的とも云えそうな物語の相貌が浮かんでくる。またスレザックのユニックな造型がこの映画に安直なプロパガンダ映画とは異なる手触りを与えている。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。