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[コメント] トップ・ハット(1935/米)

秀逸なミュージカル・コメディ。思わず画面に頬寄せてみたくなる。
ナム太郎

実は青年期に一度観た記憶があるのだが、酸いも甘いもわからぬ若造には、フレッド・アステアが示す何気ない所作のひとつひとつにもダンサーとしての彼なりの美学が貫かれていることなど読み取れるわけもなく、むしろそれが気取りすぎているようにさえ見えたものだ。そんな私には次世代のジーン・ケリーの快活なダンスのほうが理屈なしに気持ちよく、「アステアの出演作で一番好きな作品は?」などと聞かれたときには少々皮肉の意味を込めて「『タワーリング・インフェルノ』」などと話したりもしていたことを思い出す。

けれど、歳を重ねていく中で様々な映画に接した今改めて本作に触れてみると、彼とジンジャー・ロジャーズの踊るというよりも舞うようなダンスのひとつひとつに「ああ、綺麗だなぁ」と、本当に心を揺さぶられてしまった。

また、本作がミュージカルである以前に、とても面白いコメディ映画であることも忘れずに記しておかなければならないポイントだろう。人間違いなどという単純なトリックひとつで結末の見えている話を引っ張り回す力技を、的確な脇役配置で軽妙に見せる演出も見事だった。

現代のように歌って踊りまくるミュージカル形式に慣れ親しんだものにはミュージカルナンバーの少なさがいささか物足りなく思えたりするところもあるかもしれないが、数多くの映画人からもリスペクトされていることからもわかるように、時代を超えた魅力を持ち続けている作品であることは間違いない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] ゑぎ[*]

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