[コメント] 暗殺(1964/日)
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和製ヌーヴェル・ヴァーグと言える作品。幕末を舞台に、思想の波が吹き荒れ、変節と裏切り。そして剣劇と、最初から最後まで緊張感が途切れない。ストーリーも二転三転で、ちょっと気を抜くと、物語に置いてけぼりにされそうになってしまう。しかも台詞が大変聞き取りにくいため、耳もそばだてねばならず、実際これ観終わったらどーっと疲れた。
剣の腕が立ち、カリスマもあって一見豪快なようで、実は無茶苦茶複雑な心理を持った剣豪という設定の佐々木八郎は、丹波哲郎のためにあるような役柄で、これほどはまってる役は滅多になかろうと思えるほど。彼に較べるとどうしても小粒になってしまうものの、佐々木唯三郎役の木村功も真面目一辺倒の剣士をしっかり勤め上げていた。
その設定は買うんだが、後半になって、中心が清川より佐々木の方に移っていくと、物語そのものが破綻してきた上にじれったくなり、物語自体よりも、早く結末を観たいという思いだけになってしまった。結局結末を見せるためだけのために残りの物語があるように思えてしまったのが大変に残念。後半2/3は清川が幕府側に残るのか、尊皇攘夷の側なのか。それだけが知りたいのに、なかなかそれが分からないため、フラストレーションがたまる。
更に凝りに凝ったカメラ・ワークが、後半は嫌味にしか感じられないのも残念。
前半の清川主体を最後まで押し通し、その複雑な内面を前面に押し出してくれれば、傑作になり得たんだけどねえ。複雑な気分。
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