[コメント] アメリカン・サイコ(2000/米)
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突然笑いだす彼を無視して自分の話を続ける仲間。人が死んでいる絵を描きながら、殺人を告白する彼を尻目に結婚話ばかりする婚約者。周りにいる空っぽな仲間は彼を素通りしていく。唯一ジーンが彼の異常に気付いていたようだったが…。下らない自慢に命を賭け、自分より上を行く者を殺したくなる。彼の感情は自然なのかもしれない。ただ、異常なのは彼を取り巻く環境。“異常”を野放しする“異常”だ。ただ、あの時代に限らず、どこの時代でもそれはどこにでも転がっている事実だろうと思う。心にある狂気を隠し、余裕なんてないのに自分が上だと余裕をかまして作り笑いを浮かべる。そうして暮らしている人が何万にも存在する事だろう。
解釈は他の方も言っているように、2つあるだろう。1つは殺人は全て彼の妄想。2つ目は殺人があってもそれを野放しにしている社会。…恐らく、後者の解釈が多いだろうし、その解釈の方が好きではあるが、私としては前者を敢えて選びたい。バーの店員に鏡越しに罵声を浴びせている姿。あれは、恐らく鏡の中の別の自分が言っている事だろう。よって、それは彼の妄想。アレンの所に行っていなかった事も…。本当は、その殺意も罵声も実行に移すなんてできやしない。彼が出来る事は、高いモノ、お洒落なモノ、最先端のモノで体中を飾り、ワークアウトでうっとりするボディを作り上げる事。そして、皆に羨ましがられ、人の上に立つ事。あの妄想はある意味理想なのかもしれない。
きっと彼は、また戻って行くのだろう。空っぽな自分には何も見いだせず、金やモノのみが意味を為す異常な社会へ。そして順応して渇いた笑いで一時の優越感に浸る。心の狂気と凶器を隠し、妄想の中で誰かを殺しながら……。でも、それは誰の中にも存在するもの。バカには出来ない。きっと、自分達も気付く時がある筈だ。誰かに笑っている自分が虚飾と見栄で飾られている事に。
本当にイタイところをえぐってくる映画だ。ああはなりたくないな〜…。やっぱ人間はハートですよハート!!!(それも何か違うか?)
とにかくベールは上手い。
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