[コメント] 君の名は(1953/日)
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さて、それで本作を今の目で観ると…う〜ん。やっぱりきついなあ。いや、きついってのは、物語じゃなくて真知子の性格がきつい。本来の活発的な心を押し隠し、貞淑に生きようとして、それが失敗したという役なのだが、その辺の性格が一定せず、ある時は積極的になったり、ある時は消極的になったりと、感情の振れ幅が大きく、しかも妄想ばかりがふくらんでいく女性像なので、こんなのと一緒にいたらさぞかし疲れるだろう。と思わせてしまったのが敗因。意地悪な姑に仕えてるのも、なんか自分自身を悲劇のヒロインになぞらえて自分に酔ってるようにしか見えなかった。ここが一番の問題だったんじゃないかな? マッチョなことを言うつもりは全く無いんだけど、夫となった浜口の立つ瀬がないのもきつい。なまじ浜口を本当の悪人として描いてない分、その誠実さが見えてしまうので、むしろ彼の方が可愛そうに思えてくる。特に結婚する事を前提にした女性から「わたしの想い人を探して」なんてとんでもない事を言われてしまったら、男として悲しくなってくるよ。
ただ、敢えて本作がこの時代の、特に女性に受け入れられた理由も考えてみると、このヒットも分かるような気もする。
敗戦から既に8年が経過。世の中には男女同権を声高に主張する論説に溢れているのに、実質的に女性は戦前同様過程に縛り付けられてる。理想と現実のギャップを感じ始めている時代の空気があった。そんな中に、等身大の女性として真知子が存在したからなのかと思われる。そう考えるならば、抑圧の中で時として積極的になる真知子の姿に喝采を与える人も多かったのだろう。今から観ると全く逆になってしまうのだが、彼女こそが自由の象徴に祭り上げられてしまった感がある(当時真知子巻きと呼ばれるストールの巻き方が流行ったそうな)。
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