コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] パール・ハーバー(2001/米)

ただの娯楽作品として見れば・・・という意見があるのは解るが、俺はそれが許されない事もあると思う。2.9点。
死ぬまでシネマ

俺のDVDじゃないし、とうとう視てしまった。俺は基本的にはこの映画は日本人なら見るべきだと思う。今も昔も太平洋を挟んだ隣国であり、現在最も親しい友好国である合州国の大作映画で、自国が如何に描かれているかを知る事は自衛の為にも必要な事だからだ。要は、自分の中にこの作品を吟味する批判的精神があるかどうかと云う事なのだと思う。(批判的精神、これはどんな映画・意見・芸術に対しても云えると思う。)その先にどんな評価があるかは各人によって別れるだろうが。洞窟の住人で終わるにはひとを知りすぎたし映画から学び過ぎた。

ロマンスは・・如何にアメリカとはいえ現代の視点過ぎて違和感がある。奴らは英雄なので一般兵士が巻き込まれてゆく構造にもなっておらず、古来重要な主題である三角関係も稚拙で、全く『地上より永遠に』に及ばない。従軍看護婦を愚弄した愚鈍な女性たちといい、純粋に低レベルである。

爆破映像や空撮やCGは、予告編などで感じていたよりもずっと良かった。事実と異なることの問題点は比較的小さいと思うし臨場感は大したものだ。・・・ひとは破壊衝動もあるし欲情もある。それらは人生の香辛料として生きていく上で必要不可欠なのは今更云うまでもない。正直俺も米国の戦艦が撃沈される時に日本機の勇姿に快哉を叫ぶ自分の存在を否定しない。それとどう付き合い、どう操るかだろう。

続いて俺の心に浮かぶのは、沈んでゆく戦艦大和であり武蔵であり、その他の帝国海軍の乗組員だ。魚雷に撃沈された対馬丸の学童たちであり、自機や滑走路を破壊されて飛び立てなかった航空隊員たちの無念であり、人間魚雷であり、神風特別攻撃隊だ。そして、不時着して日本臣民になぶり殺しにされた米兵だ。「確かに日本は昔アメリカと戦争したかも知れないけど、この映画で今の日本を批判してる訳じゃないし、楽しければ良いでしょ?」という人間がこの世にいるのかも知れないが、普段少しでも自分の脳味噌を推敲できる奴ならそんな事は云わないだろう。

俺は、この映画で国威を発揚させようとする人間が憎い。この映画への批判で国威を発揚させようとしている奴も憎い。こういう映画を無批判に受け入れてしまう米国の一般的な風潮(国民性?)が憎い。DVDのメイキングで、この映画が独立した映画ではなく、事実上軍から外部委託された広報映画だということが恥じらいも無く曝け出されているが、それに金を出すディズニー社って野郎はホント、悪の「オトナ帝国」なんだな。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)りかちゅ[*] ヒエロ[*] アルシュ[*] ねこすけ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。