[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)
「できない」ことがわからない傲慢
演出は非常に優れていると思います。2歩で1段ずつ階段を登るところとか、キャラクターのちょっとした仕草にも、こだわりがあります。
ストーリーはいい加減だと思います。消化不良なものは単なる消化不良であって、それだから意味があるというものではないと思います。
テーマは全くいただけません。千尋は全体としては宮崎アニメのいつものヒロインで、個人的に興味は持ちませんが、それは好みですから別に構いません。問題は、引っ越しが嫌だったり、他者への礼儀がなかったりする導入部を付け加えることで、キャラクターが成長したように受け取ってもらえるだろうと監督が考えたことです。千尋の唐突な変化は「そういう面もあるが」というものではなく、この作品の根源的な欠陥です。 監督は「千尋のやったことは、あなたにもできる」というメッセージを子供たちに伝えたかったようですが、適応できる子供には最初からさしたる障害はないし、適応できない子供はそもそもできない。できないところに着目してきちんと変化のプロセスを描くのならわかりますが、そういったものの存在に目を向けずに、できることを前提としたところからしか語ることができなかったというのは、怠慢というよりも無知であることの傲慢を感じます。高いところに立つのではなく、自らの感覚に即したテーマを考えるところから始めた方がよいのではないかと思います。
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