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[コメント] リビング・エンド(1992/米)

逃げ場のない絶望から始まる、刹那的な逃避行。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







その「生」が生み出す怒りも、暴力も、享楽も、あまりに刹那的なだけに、その果てにある「死」の臭いが着実に濃度を増していく。「氷を台にして首を吊る」生殺し的な死のイメージは、デッド・カン・ダンス、ザ・スミス、ジョイ・ディヴィジョンなどの(あまりに「らし過ぎる」)音楽の引用や、手首を抉って死を暴こうとするシーンをはじめとする様々な死にとり憑かれた2人の行動を経て、徐々に2人を病のように蝕んでいく。勢いのある画面の魅力もさることながら、AIDSという病を通して、見えない「死」の存在をフィルムに定着させることに成功した映画、と思う。「死」を越えた永遠の「愛」への想いすらセックスと共に萎え、覆い被さるような「死」の重みに途方に暮れ佇むラスト・シーンが印象的。

サイマフさんのあらすじを拝見すると、ゲイ版『テルマ&ルイーズ』として話題になったそうだが、CD&映画オタクの部屋にデカデカと貼られた『メイド・イン・USA』のポスターや、ややコラージュっぽい音楽知識の引用を考えると、「『気狂いピエロ』になれなかった2人」とでも言ったほうが、監督としては本望かもしれない(笑)。

(評価:★4)

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