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[コメント] アエリータ(1924/露)

どのシークエンスも半端で物語は思いつきの尻切れトンボで、フィルムに脱落があるのではないかと疑わせる内容だった。革命も成就されないしSF美術も大したものではない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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火星は結局は技師の夢想だった。夢想という設定は初期SFに多い。宇宙船が弾丸になって飛ぶのは『月世界旅行』を想起させる。火星の女王アエリータに望遠鏡で見られて惚れられているという夢想は可愛いものだ。地下労働者が革命を起こす有名なトンデモ展開があるのだが、そこで指導するのがこの女王というのは革命的にオカシかろう。

最後は主人公は宇宙船の設計を燃やして地道に生きようとする。そのため肝心の革命も夢想で終わってしまった。これはソ連的にはいいのだろうか。1/3が冷蔵庫行の労働者の革命と社会主義共和国(と字幕がある)バンザイも前振りというものがないため唐突。インターナショナルならぬインターワールドの革命は、彼等的には結構なことだからもっと真面目に語ればいいのにと思うが、冗談にしか見えない。作者の本音は革命など冗談なのかも知れない。

冒頭の怪電報がNYのタイヤの商標だったというオチは資本主義の揶揄なのだろう。階段のシルエットでの浮気が嘘と判る展開なのだが、その影が何のかそこから謎解きをしないので意味が判らない。アエリータの侍女が、穿いている骨だけのパンタロン可愛く、ロボットと戯れるなど活躍するのが嬉しい俳優だった。見処はそこくらいか。

原作脚本のアレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイはレフ・トルストイの又従兄弟のアレクセイ・コンスタンチノヴィッチ・トルストイとは別人。Wikiによれば、ジョージ・オーウェルは1946年に発表された「文学の禁圧」という文章の中で、ソ連政権から特権的な待遇を与えられている一方、表現の自由が剥奪されている作家の例として、イリヤ・エレンブルクと並べて本作のA・N・トルストイをあげている由。

(評価:★2)

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