大変複雑な内容である。

物語は戦争の狂気と欲望の中で、平穏な世界では想像できないような状況下、様々に切り捨てられた記憶と現実が数十年経過して蘇るというもの。森村誠一は戦後隠された非現実的な現実を次第にひとつのものに結びつけるという誠実でダイナミックに表現している。

これだけ素晴らしく面白い原作と、これだけ有能な役者を揃えても、映画自体が何とも面白くない理由は、映画監督に責任があるとしか思えない。映画でないと映し出すことができないもの、がここには表現されていない。

角川映画でなければヒットしなかったろうし、出来映えはテレビドラマのレベルである。今のテレビの方がよっぽどうまく作られている。