[コメント] トレーニング・デイ(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
デンゼル・ワシントンは悪に対抗出来る正義を実現する為に狼になった。アメリカ映画ではお馴染み西部劇から続いてきたダーティハリー的キャラ。正義の為には法も犯す。対してイーサン・ホークも理想に燃える青臭い新米とありがち。この手のデコボココンビは定番だろう。
だけどベクトルがまったく違う。
映画を鑑賞中、イーサン・ホークと視線を共有した。一体デンゼル・ワシントンは悪党なのか何なのか。たまに一理ある事を言ったりするから迷う。イーサン・ホークと一緒に正義について悩むのだ。
デンゼル・ワシントンの無法も最初は正義の為だったのだろう。しかし悪と対峙するうちに彼自身が悪になってしまっている。警察権力を傘にした強さに溺れてしまってる。お偉いさん達との場面で彼が司法権力の腐敗の一部に過ぎない事を感じ取れる。
やがてデンゼル・ワシントンの悪の姿が徐々に現れる。一線を越えてしまった時の虚無感と絶望。この緊張感はなかなか凄い。極めつけはギャングの家ではめられた時。窓の外に車が見えず一人残された事実に気づいた瞬間。ギャング達が一気に命に危険を及ぼす恐ろしい存在に変化してしまう一瞬。この緊迫したスリルの演出は見事。
デンゼル・ワシントンはイーサン・ホークと戦った後に叫ぶ「俺は王様だ!」。そして権力を振り回す哀れな王様は悲惨な最期を遂げる。
これは力を持って征する従来のアメリカンヒーロー(と、アメリカ型力の正義)へのアンチテーゼであり、それはつまりデンゼルワシントンは力を武器に正義の名のもと無法行為を繰り返す王様・・アメリカそのものなのではないだろうか・・?
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