[コメント] アザーズ(2001/米=仏=スペイン)
ニコール・キッドマンがはまり役。時代の非寛容に押しつぶされる母親、『カッコーの巣の上で』の婦長に通ずる怖さだ。その怖さがあればこその、ハラハラ感と説得力。すばらしい。
3人の訪問者のうさん臭さ、子供の幽霊話など、仕掛けもちりばめられているが、神経質で潔癖な母親の存在感がまず映画を支配する。
もっともまともでいそうで、もっとも危うい存在。非寛容な時代の、非寛容の怖さ。他の登場人物が妙に冷静であることが、さらにその異常さを増幅する。この母親が何かをしでかすに違いない。前半はこのハラハラ感で進んでいく。上質のサイコスリラーの味。
そして夫の帰還の前後から、別の怖さがじわじわと映画全体に広がり始める。死体の写真を取る習慣。隠された墓。奇妙な夫の行動。そして、やはり出現する幽霊らしき存在。それは、得体の知れない恐怖。違和感はすべてのものに広がり、ホラーの色合いを強めていく。
やがて、観客はその違和感の意味を知ることになる。クラインのツボに似て、表と裏がつながりねじれた空間。ここで、あの母親の存在感がきっちりと答えを示してくれるのだ。
この映画、さまざまな素材が絶妙の味をかもし出す極上の料理のよう。派手さはないが、映画のもたらすいろんな要素がじわじわと効いてくる。それは、見終わった後にもからだに染み付いて、じくじくと続く。
ちなみに、最後なぜか涙が出てきて困ってしまった。なぜなのか自分でもわからない、なんだったのだろう。もしかしたら、今そこにいる人たちの悲しみの涙なのかも。。。
(何の前知識も無く見れて良かった。無心に見れば、いい映画ですよ)
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