[コメント] ムッシュ・カステラの恋(2000/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
しかしここでは、なんといっても抜群の距離感に陶酔。
この映画は、こういう距離感で始まる:△(正三角形)
頂点が作者(つくり手)、底辺の2点は登場人物と観客(受け手)。それぞれの距離がまったく同じである正三角形。でも、かなり大き目の三角形なので、それぞれの距離が離れていて、ちょっとヨソヨソしい。
だれもが客観的にそれぞれを見渡している感じ。
それが、「カステラ・ポロポロ」で底辺が極端に短い二等辺三角形になるのだ:∆
それまでの地道な人物描写の積み重ねのおかげか、ふと気付くと「わたし」は登場人物たちに思いっきり肩入れするようになっているのだ。しょ〜もねえオヤジはいつのまにか持ち前の「不思議な魅力」をバリバリ発揮している。決め手に欠けるカップルは「なんで別れられないか分からない」。花柄おくさん(=悪趣味)は「無趣味」と義妹の趣味を笑う。
でも、みんな、悪いやつじゃないんだよね。
あれほどカステラ氏をケギライしていたクララ(舞台女優・英語教師)。嫌悪感が頂点に達したころ、目の前で自作の詩を読みあげられたりする。愛の詩(たまんないねえ)。なのに翌週には「イングリッシュ・ティー・ショップ」で彼をじっと待つ。芝居の初日に「カステラ氏、くるのかしら」と心配する。
あれ?
この時点で登場人物と「わたし」の距離はゼロになる。
図示すると:│ (登場人物への感情移入完了)
幕が上がる。会場内に彼の姿はない。落胆。
でもその後の「あ!」。
ああ、うれしかった(涙)。
「他人の味」(他人の趣味)。他人という存在は、わたしと時間を共有する存在。だから、他人の味が分かるようになることは、うれしいことなのだ。
でもじつは。「ヒゲ剃っても誰も気付かない」エピソードでは、私も見事に気付きませんでした。
しょ〜もねえなあ、オヤジはよう。
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