[コメント] カンダハール(2001/イラン=仏)
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9.11以降の世界情勢からこの映画への注目度がさらに高まったわけだが、9.11を無くしてもこの映画は見ていて勉強になると思った。昨年の東京国際映画祭グランプリの『スローガン』というアルバニアの映画を映画祭で見たのだが、馴染みの薄いアルバニアという社会主義体制化だった国の現状を描き、学ぶ部分も多かった。『カンダハール』にしても、例え9.11が無くても、知識の薄いアフガニスタンという国の状況をリアルに感じることが出来、学ぶことは多かっただろう。だが、当初はカンヌで注目されたこの映画が、今の現状がなければ日本で公開されたかも不明なのだが・・・。
映画としてみると、正直ストーリーに一押し足りないと思う。そういう映画ではないのは理解できるが、見た後のカタルシスなどは感じられなかった。チャン・イーモウ監督の『あの子を探して』のように、貧困の現状を描きつつも、人の心に印象も残す方が、映画としての印象は深い。この映画の場合は感動を狙いすぎるのは禁物だが、もう少しドラマ要素があっても良かった気がした。
しかし、アフガニスタンの現状を描いた描写は見事だ。危険なロケを試みただけはある。映画の主題であるタリバン政権下の女性の現状を見ると、男女平等になりつつある我々の社会との違いに驚くし、冒頭とラストの台詞を聞くと、女性がどれだけ不自由かを痛感させられる。登場する人物達が、いかなる手段をしても自分を良い状況にしたいと思い、嘘をついたりする姿は見ていてイライラもするが、貧困が生んだ姿と考えると人間の悲惨な面を感じる。赤十字キャンプのシーンは痛々しく、難民の様子を赤裸々に表現している。その他、映画全編を通して普通では見ることのできないアフガニスタンの姿が見えてくる。ドラマというよりは、ドキュメンタリー要素が強い映画だった気がする。これを世界に向けて伝えた功績は評価したい。9.11後の世界情勢と絡めつつも、違った視点からアフガニスタンの姿を見られるという点で貴重な映画だと思う。
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