[コメント] 将軍家光の乱心 激突(1989/日)
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通常この手のお話には、他の全出演者を吹き飛ばして観客の目を集めてしまう役者が一人くらいはいるものです。脚本の緻密さや監督の意図などを超えて、勝手に作品を牽引していってしまうような人。今作はそんな人が決定的に不足していたように思えます。もっと具体的に言うと、「汗」と「狂気」が足りないんです。
何ていうか、全体的に薄味なんですよね。松方弘樹や千葉真一など本来だったらかなり狂った演技のできる人たちを含めて、みんな演技が非常に「真っ当」なんです。狂った人がいない代わりに、話をグズグズにする酷い演技をする人もいない。台詞回しや演出も決して一線を越えない。どこか「常識人が常識の範疇で考えた“破天荒”」っていう感じを受けるんです。
そう考えると、緒形拳という「抑えた演技」の役者が主演の座に着いているのも納得ができます。薄味の作品を薄いまま美味しくまとめてくれちゃってる。この人もかなり狂った演技は上手い人なんですけどね。この手の派手な作品とは、ちょっと狂気の質が違うように思います。
また味方側の「浪人衆」の個々の物語が全くと言っていいほど描かれなかったのも薄味の一因です。感情移入がし切れない中、全員が汗もかかずに「さらり」「ふわり」と死んでいくように見えました。
正直このお話であれば、もっとグツグツに煮えたぎった激熱のお祭り映画が作れた気がして、ちょっともったいない感じがします。ただもうこれは監督との味付けの好みの差なので仕方ない。実際、後日談などはきれいにまとまっていましたし、結構ちゃんと整った作品だったとは思います。
まぁ唯一京本政樹だけは狂気をガンガンと撒き散らしてくれてましたけどね。あれはあれで好きなんですが、狂ってりゃいいってわけでもないというのは一応申し上げておきたい。
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