[コメント] 約束 ラ・プロミッセ(2000/仏)
誰も泣かないで。
失語症を研究テーマにと考えていた僕にとって、少なからず言語障害の患者さんたちと交流のあった者として、少年がいかにしておじいさんとコミュニケーションを取るのか、そこに注目していた。
個人的には、あのアントワーヌおじいさんの内的独白は、面白かったし、この映画には欠かせない要素ではあるとは思ったが、同時に、もしなかったとしたら、もっともっと映画世界に引き込まれたのではないか、とも思った。せめて、「ウイ/ノン」までは、黙っていてくれれば・・・と言うのは、求めすぎだろうか。
特筆すべきは、こうした闘病モノにありがちな、「涙」が(おそらく)ひとつもなかったところ。「死」は、生きとし生ける者すべてに訪れる時間だが、この映画では、その死を、今いる場所から「旅立つ」という感覚で捉えているように思う。その旅立ちの時のために、その別れの時のために、流す涙は取っておくのだ、という決意のようなもの。
涙を流す時間があるのなら、今を精一杯生きよう、今生きている時間を目一杯楽しもう、そんな命の声がした。
僕たちは知っている。彼らが、同じ場所にいる時間が、そう長くはないことを。だが、「ソレカラ」のことは今はどうでもいいではないか、今ココ二イル二人を見守ってほしい、そんな心の声がした。
しみじみとした感慨に浸りながらも、それを、あえてコトバにしてしまったことが、僕には残念に思えた。
〔★3.5〕
[京都みなみ会館/3.12.02]■[review:3.13.02up]
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