[コメント] ブラックホーク・ダウン(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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敵軍の中に残された兵隊たち。よくある手垢の付いた設定だが、ノンフィクションだと聞くと、へェー現実はどんなのだろう、一度は観てもいいか、という気にもなる。
フィクションで面白いかどうかは、現実に起こりうるかという可能性の程度の問題になるのであろうが、ノンフィクションはそういう点はクリアしており、更には現実の重みというものを持っている。
米国と当事国でもめた、内戦かジェノサイド(虐殺)かというのも、程度の問題になるらしい。本件では「これは単なる内戦です」という当事国の制圧軍部の発表に対し、米国は「20数万人が殺されているのでジェノサイドだ」と介入した。それでは、極端に100人だったら介入しないのかというと・・・たぶんしないだろう。100人は見捨てられるだけなのだ。
すべては、程度の問題なのだ。
しかしここに1人の司令官がいる。本作戦の最高責任者ガリソン将軍だ。彼は「1人も戦場に残すな。全員連れて帰れ」と3度も声高く叫ぶ。1人、2人程度だったら放っておいて帰って来い、5人程度だったら救けに行け、ではないのだ。この命令により被害が拡大するかもしれない―それを承知でこの命令を下したのは、これがガリソンの信条だったからか。思うに、この信条はこの職に就いた時に彼が自分自身に課した誓いではなかったろうか。
しかし結果それは叶わなかった。その残念さは考えるに余りある。敵将インディッド将軍が戦死した翌日まで退官しなかったのは、当然それ故だ。
世の中は、程度の問題で物事を判断することが多いが、人の信条は程度ではなくハッキリしたものだ。そしてそれを貫き通すことは現実では何と難しいことか。いや難しいというより、それ以上にめちゃめちゃになってしまうのが現実だろう。そんな現実をよくとらえたノンフィクションだった。
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