[コメント] KT(2002/日=韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
60年代後半から70年代前半のうねり、「戦争」を意識した最後の「戦後」。
それぞれの置かれた境遇、立場はバラバラ。しかし、
原田芳雄は、既に二度の「戦争」に負け、オオカミとして生きることの帰結を知りつくしていた。
佐藤浩市は、まさに「戦争」の真っ只中、「今」を生きようとするオオカミ。やがて敗れ、ブタのふりして生きる選択をおこなう。
と、ここまではわかるのだが、最初は筒井道隆演じるボディーガードの存在はどう捉えればよいのか、はかりかねた。
ペペロンチーノ氏の含蓄に富んだレビューを読んで納得。
本作の「戦争」は、「終戦」をむかえるにあたって、新たな「戦争」を起こす引き金、新たなオオカミを生み出していたのだ。いくら「敵」を投げ飛ばしても、事件前の彼が「ちくしょー」などと叫ぶべくもない。本作の中で、新たな「戦争」は既に始まっていたかもしれないし、そうではないかもしれない。
正直、作品全体はすっと入ってこないし、韓国で本作は理解しづらいのではないか(というか、『シュリ』に対する日本映画の回答のごとく喧伝されることへの違和感)と思われる。ただ阪本順治作品に通じる、敗れた、もしくは始めから敗れる運命にある男たちの生きざまや彼らの見る世界は、本作でも感じることができた。(だからこそ、韓国側の人間は描かれているようでいて、実はおざなりな扱いではないのかという疑念も消えない。)
しかし、そうした文脈で読んでしまうと、社会性とは結局切り離されてしまうのではないかという思いがある(そのこと自体は否定しないが、本作を観にいく動機は社会性を掴みたいという思いが含まれているだろうから)、具体的な言葉よりも抽象的な言葉のほうが心に響くのもしかり。とはいえ、そもそも戦後の思想状況、日韓関係そのものが、すっと入ってくるほうが不気味という側面をもっているのかもしれない。(やたら複雑、複雑と煽るのもよくないが…)
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