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[コメント] マイノリティ・リポート(2002/米)

確かに面白くはあったんだけど、完全に期待はずれ。突っ込むべき所を回避して普通のアクションにしてもねえ。しっかりしてくれよ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 この冬一番の期待作品だった。最近とみに演技力が増してきたクルーズと、SFだったらこの人!のスピルバーグが組んだのだ(『A.I.』は思い切り期待はずれだったけど)。期待しないわけにはいかない。オープニングを観て、クルーズの髪型が『ブレードランナー』のハリソン=フォードに似てると何となく思ってから、ますます期待は増した(意識してたのかな?)。

 それで本編は、行き継ぐ暇のないアクションの連続と、きっちり計算された複線の張り方や意外なストーリーの落とし穴など、色々工夫がされているし、近未来的な小道具もほどよく配置されて未来的な描写も巧い。大きく観れば決して悪い作品じゃない。

 しかし、私が期待していたのはこんなものじゃなかった。

 未来予知という設定ならば、不確定の未来に対する“ゆらぎ”のようなものをもう少し全面的に主題にするのか、それともこのシステムの危険性と安定性とを巡って政治的な駆け引き、場合によっては国全体を巻き込んだ論争なり武力行使なりに持っていってくれるもんだと思ってたのに、そう言うのが全くなく、結局ジョンの個人的な事柄に終始してしまった(確かに“ゆらぎ”についての言及はあるものの、それだって未来が確実なものとしてでしか捉えてない。“不確定な未来”という描写が欲しかった)。

 このような作りは本来、予算がないからどうしても個人的な事柄に持っていかなければ、映画自体が作れないと言うB級作品と同じやり方だ。ただ、それならそれで“自分とは何者か?”という哲学的な方向に持っていった『ブレード・ランナー』みたいな方向性だってあったんだけど(奇しくも両方ともディックが原作だ)。それにも触れることなく終わってしまった。

 これだけの金とネーム・バリューを持っていたなら、もっと派手に、国そのものを挙げての話にして然りだったんだけどね。SF的な小道具をはぎ取ってみたら、単なる警察ものの映画でしかない。魅力的な存在として用いられるべきプリコグだって、人である必然性が感じられないと言う根本的な問題があるし(ちょっとだけ脚本を直せば人でなくして、コンピュータでも無機物でもなんでも構わないんだよね)。人として描く以上、その人としての存在価値をもっと突っ込むべきだったんじゃなかったか?

 それに、あんなに簡単に犯罪予防局がラストで取りつぶされてしまい、それに満足してるってのも変。結果として犯罪はますます増えていくんだろ?大体実際に人一人殺してるはずなんだけど、その事はどうなったの?

 作品自体は良かったんだけどなあ。あと一歩足りなかったな。

 偶然だが、この映画を見た丁度同じ日の夜、先日レンタルしてきた『メトロポリス』を観る。1927年に作られた作品なんだけど、『マイノリティ・リポート』より遙かにこっちの方が面白かったというのもねえ。80年という時代に映画は一体どれだけ進歩したというのだ?

(評価:★3)

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