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[コメント] マイノリティ・リポート(2002/米)

筋金入りの映画馬鹿スピルバーグは単なる一技法に過ぎないはずの「フラッシュ・フォワード」を主題にまで押し上げ、身の毛もよだつほどの視覚至上主義を展開する。視覚に対する絶対服従宣言が全篇を貫いているという意味において、これは感動的に「映画」である。
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**ネタバレ注意**
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プリコグの予知した未来は(まるで映画のような!)「視覚イメージ」としてディスプレイされ、トム・クルーズは武術の型のように「舞って」それを操作・解析する。ここで「そこまで科学が発達しているのならば、操作する人間の動作量が最小限度に抑えられるようにシステムがデザインされていないのはおかしい」との説は、映画的に云ってまったくナンセンスである。映画が要請しているのはあくまでも「舞う」ことの視覚性であって、科学考証の正確さではないのだから。

あるいは、なぜ、クルーズの息子の誘拐犯(のニセモノ)は「写真」をばらまいているのか。なぜ、この近未来社会においては本人認証システムの基礎が「網膜」に置かれているのか。なぜ、チューブに埋め込まれた収容所の囚人たちは「一望できる」ように配列されているのか。答えは一言、「これが『視覚』の映画だから」である。まったく感動的ではないか。

その一方で、観客に親切な(と本人は思い込んでいるであろう)スピルバーグは自身なんの興味もない犯人探し・真相暴きを馬鹿丁寧に語ることも忘れず、それがために映画はきわめて冗長になっている。緊張感が持続しない。ギャグも冴えない。高低(垂直)のアクションにはいくつか目を見張るカットがあるものの、アクション・シーンも全般的には好調とは云い難い。「球形」イメージを連打するさまもいささか安直だと思う。しかしながらヤヌス・カミンスキーとの共謀ぶりを無視することはやはりできないだろう。このコンビによる他の作品と同様に、これも決して普通の映画ではない。

(評価:★3)

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