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[コメント] ユリシーズの瞳(1995/仏=伊=ギリシャ)

バルカンにはたくさんの国境が存在する。そして人々が殺し合ってきた。そのことだけ伝われば十分なんじゃないだろうか。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







難解。理解する映画ではなく、感じる映画。

主人公とともに訪れる土地土地はどこも荒れ果て、その光景には胸かきむしられるよう。寒々しい街角でひとり下車された老婆、寝台列車、解体されたレーニン像との川くだり。

賑やかなホームパーティを楽しんでいた家族は、家財を徴収されていく様子を無抵抗に見守るしかなく・・・国が共産主義に色付けされていく中没落しゆく富裕層のイメージか。歴史が現在に重なり幻想的なシーンが連ねられてゆく。

そしてサラエボ。ニュース映像で見慣れたボロボロに破壊された街並みに、息を潜めて暮らす人々。霧に隠れることによってのみ密かに人間らしい営みを楽しむことができたのに。これだけ重苦しい空気に長々付き合って、ラストあんなことになるとは。惨憺たる気持ちになる。ハーヴェイ・カイテルの唸るような泣き声が胸に響いた。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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