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[コメント] Dolls(2002/日)

北野武版文楽的情念ファンタジー。泣いたぞ!だけど分かり易すぎる。もっと難解でいい。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







男は天使に出会った。

男と出会ったことで、天使は片翼を失った。

男が翼をむしり取ったのだ。

男は罪を背負い、罪を贖うために歩く。

毒々しいほど赤い紅葉に人の命を重ねる。

二人を結ぶ赤い絆が、無造作に紅葉を集め、散らしていく。

天使は原罪として男と結ばれ、

いつしか二人は冥途への案内人となっている。

女に対する男のけじめについては『HANA−BI』と同じだし、『鬼火』のごとく死への道程を歩む男は『その男、凶暴につき』以来描き続けたものだし、残された女の悲しみは『あの夏いちばん静かな海』だし、なんら新しいテーマはこの映画にはない。 だが、自身の描き続けたテーマと「文楽の情念の世界」に共通項を見いだしたことは驚くべき発見だと思う。

BROTHER』や『HANA−BI』が“外国への受け狙いのための日本文化紹介”だった(言い換えれば添え物だった)のに対し、本作では自分の世界へと昇華させている。正直、最後の辺りは「もう分かったよ」ってくらいクドかったけど。

んなわけあるかいっ!ってツッコミ所満載の話だが、そこはそれ、文楽の人形遣いと同じように気にしてはいけない。状況ではなく情念こそこの映画の世界だからだ。むしろ、もっと観念的でもいい。もっと前衛的でもいい。

ここんとこ一般受けを狙いすぎて「らしさ」が無くなっていたが、『ソネチネ』以来久々の北野映画復活と私は言いたい。だが、カメラを動かすことを覚えてしまったため、映像が饒舌になりすぎてしまった。稚拙だがとんがっていた昔の北野映画はもう戻ってこない。

余談

ちなみに文楽の人形遣い(主遣い=黒子じゃない人)は、10年20年くらいのキャリアじゃまだまだヒヨッ子なのだそうだ。70歳80歳くらいになってやっと一流となり、これくらいになるとその存在に観客が気付かないほど気を消しているのだという(本当だろうか?)。一流の人形遣いは、街頭の交通量調査(カチャカチャと人数を数えるやつね)でも気付かれずに数えられないそうだ(ごめんなさい。これは嘘です)。

(評価:★4)

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